国際問題文献紹介:サンフランシスコ・システムの評価
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東南アジア及びオセアニアにおける米国との同盟の評価:なぜサンフランシスコ・システムは続いているのか?
William T.Tow,
Assessing U.S.Bilateral Security Alliances in the Asia Pacific's "Southern Rim": Why the San Francisco System Endures(working paper series in the Asia-Pacific Research Center, Stanford University)

今日アジア大平洋には、第二次大戦後に米国とアジアの国々との間で結ばれた二国間同盟のネットワーク(いわゆる「サンフランシスコ・システム」)と多国間安全保障協力の枠組みが並存している。北東アジアのみならず東南アジア及びオセアニアの多くの国々にとり米国との二国間同盟網は安全保障政策の重要な柱の一つである。また、米国自身にとっても政治的及び経済的に極めて重要な地域であるアジア大平洋に関与し、同地域で主導的役割を果たす上で不可欠の手段として認識されている。この同盟網の特徴は北東アジアと東南アジアとの非対称性であり、東南アジアでは米軍のプレゼンスがなく、関係が緩やかであることである。

 これまで、リアリズムからは特にサンフランシスコ・システムの戦略上の重要性が強調されており、他方、リベラリズムからは、中長期的には二国間同盟より多国間安全保障協力の重要性が高まることが主張されている。このように、これまでアジア大平洋の安全保障システムは二国間同盟かそれとも多国間安保かという二者択一で論じられることがしばしばであった。

 本稿で紹介するウィリアム・タウ・クィーンズランド大学准教授(豪州)がスタンフォード大学で発表した論文は、米国と東南アジア及び豪州との安保関係に焦点を当てたものであり、それが地域の安全保障における役割を考察することを目的としている。本論文の寄って立つ立場はリアリズムであるが、本論文は、これまであまり研究されてこなかった東南アジア・オセアニア地域を対象に同盟を考察している。筆者の結論は、これらの地域における米国との間の二国間同盟は単独よりむしろ豪州やASEANがイニシアティブを取る地域安定のための多国間安全保障の枠組みと連携を図ることが最も効果的であるというものである。  この結論を導くため、筆者はまず東南アジアとオセアニアにおける米国の同盟網の特徴を分析している。筆者によれば、その第一の特徴はそれぞれの二国間同盟の利益が異なる一方で、二国間の枠を超えて各国が利益を共有し合っている点にある。また第二の特徴は、共通の脅威が存在しないことがその有効性に大きく影響しないという点である。

 米国のアジア政策において、東南アジア及びオセアニアの優先順位は中国や我が国などの大国から成る北東アジアほど高くはない。しかしながら、クリントン大統領が九六年に同盟の強化を図るため歴訪して以来、両国の関係は次第に深まってきている。また、冷戦期米国は二国間安保関係を重視していたのが、次第に二国間と多国間とが相互に補完し合う戦略であると考えるようになった。米国はその戦略に基づき、東南アジア及びオセアニアの同盟国のみならず潜在的敵国との間でも安保関係を強化し、それを通じてそれぞれ異なったバイラテラリズムを追求している。
 東南アジア及びオセアニアの安全保障は、米国の政治的指導力がどれだけ同盟国の利益となっているか、また米国の戦略上の利益が同盟国のそれと合致するかどうかが鍵である。豪州、タイ及びシンガポールに見られるように、米国の「協力的関与」戦略は、米国と東南アジアの同盟国との間のコミュニケーションとインターオペラビリティの向上を促している。米国の基本的な考え方は、二国間の安保関係の強化は好ましく、二国間及び多国間関係と対話の創設を通じて安全保障上の問題を検討するための枠組みである「多元的安全保障」の傾向を構成するものであると考えている。米国の東南アジアの安全保障に関する戦略は活発である一方で柔軟である。筆者は、安全保障上の脅威との均衡はその同盟網の主要な特徴ではなく、フィリピンの場合を除いて、すべての同盟国は中国にいかに関与するかにより関心がある。

 他の同盟と同様に、勢力均衡が東南アジア諸国との同盟網の主要な動機になっていることは間違いない。東南アジア諸国の反覇権主義的感情は中国に向けられているが、様々な政治安全保障のネットワークを通じて共同で外交を進めることによって中国との勢力均衡を図ろうとしている。これは中国に対してその戦略を修正して、多国間の安全保障ネットワークの構築に参画させようというものである。アメリカの東南アジアでの同盟の主要な要因は地域の安全保障の危機を脱する上での有効性にある。米国の政策に対する東南アジアの同盟国の認識はまちまちである。安全保障の危機には政変や政権の正当性に対する挑戦が含まれる。効果的な多国間安保協力の枠組みが存在しない状況において、個々の国の利益を地域全体の利益に関係づける二国間同盟網を維持しそれを機能させることが、東南アジア及びオセアニア諸国にとり重要である。このシステムは特に海上保安、政治の安定及び戦略的な信頼醸成の上で有効である。また、これは米国とその同盟国との間の協議と調整に柔軟性を持たせることにより危機への対処能力を高めるものである。このように、東南アジア及びオセアニアでは・
A・
アのシステムは多国間機構よりも地域の安定の上で寄与している。

 東南アジア及びオセアニアにおける同盟網は、この地域の諸国に対して重大な戦略上の問題を提起している。それは、この地域に新たな脅威が出現した時、それが安心感を醸成し、対立を回避させる上で有効に機能するかどうかである。

 筆者は最後に、同盟網が有効に機能するかどうかは米国とその同盟国とがそれを通じて共通の利益を共有するかどうかにかかっていること、また長期にわたって同盟網が機能するかどうかは、地域を超えて二国間及び多国間の安全保障アプローチを統合できるかどうかにかかっていると論じている。二国間と多国間の安保システムは、筆者も指摘するように相互補完的関係にあり、多国間の枠組みが発展していかなければ、二国間安保のネットワークは長くは続かないであろう。

 本論文は、リアリズムによる同盟の分析においても二国間同盟と多国間安保との連携の重要性が導かれることを示唆している。このように、本論文は米国との同盟に関する研究をさらに発展させるものである。  













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