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日米、米韓同盟とアジア太平洋の多国間安保:ASEANからの視点 Chin Kin Wah and Pang Eng Fong, Relating the U.S.-Korea and U.S.-Japan Alliance to Emerging Asia Pacific Multilateral Process: A ASEAN Perspective. working paper series of the Asia-Pacific Research Center, Stanford University, March 2000. 冷戦の対立構造が終焉した今日、日米同盟を始め米国とアジア諸国との間の安保条約網がアジア太平洋の安定の上で果たす役割は小さくない。その一方で、近年様々な多国間安保の枠組みがASEANなどによって創設されつつある。こうした状況に対する政府関係者、ジャーナリズム及びアカデミズムの関心は高いが、その見方は一様ではない。 本稿で紹介するシンガポールのチン・キン・ワ・シンガポール国立大学准教授とパン・エン・フォン大使の手による論文は、日米、米韓同盟と新たに登場しつつあるアジア太平洋の多国間安保との関係について、ASEANの視点から論じたものである。 論文の結論は、ASEANにとりこれらの同盟はアジア太平洋の安定の上でも、またASEANが協調的安保を進める上でも重要性を有するというものである。この結論を導くため、筆者は、まず歴史を振り返って日米、米韓同盟が東南アジアの安全保障の上でいかなる役割を果たしてきたのかを分析することから論じ始めている。 冷戦期を通じ、ASEAN諸国は政治的経済的に弱体であり、加えてANZUSなど多国間安保の枠組みが有効でなかったため、米国の同盟網と米軍のプレゼンスに大きく依存していた。こうしたASEAN諸国の態度には歴史的経験、安全保障上の必要性、地理的特性、戦略及びイデオロギー上の動機などが影響した。 しかし、冷戦後ASEAN諸国のこうした同盟に対する見方は変化しつつある。筆者はその要因として、(一)東アジアの安保環境の変化、(二)ASEANの拡大、(三)アジアにおける米軍のプレゼンスに対する関心、(四)中国の国力の上昇、(五)日本の経済力の相対的な低下、(六)多国間安保協力の枠組みの創設、(七)北東アジアと東南アジアの安全保障のリンケージの七点を指摘する。 またASEANは、冷戦後ARFを始め多国間安保の枠組みを創設するなど広域的な安全保障に積極的になりつつある。 しかし、筆者はそのことが日米、米韓同盟に対する彼らの関心を失わせたどころか、逆に再評価させたと見る。中でもASEANは、日米同盟が地域の安定及び経済発展の上で不可欠であると見る。そして、近年の日米防衛協力進展の動きは、この地域における米軍のプレゼンス強化につながるとして歓迎する。また将来日米同盟が解消する事態が生じた場合、日本の核武装と軍事力増強を促し、ASEAN諸国に脅威を与えることを懸念する。他方、TMDの日米共同研究は北朝鮮や中国のミサイル開発を促し、国際安保環境の不安定化を招くと批判的である。 このように、筆者によれば、冷戦後の日米同盟はASEANにとり、(一)日本の核武装の阻止、(二)日本における軍国主義の復活の阻止、(三)応分の負担と安保協議を通じ、均衡のとれた安保政策の追求といった意義があると捉える。 他方でASEANは、日米が防衛協力を行う「周辺事態」の定義が曖昧にされたため、シーレーンが脅かされた場合、米軍が効果的に対処できるかどうかを不安視する。また、東ティモールの例に見られるように、国連平和維持活動に対する日本の協力が国内法で一定の制約を受けていることも懸念する。 それでは多国間安保はどうか。ASEANが創設したARFは、他の安保機構とは異なり、信頼醸成と政策の透明性向上を目的としている。筆者は、ARFは同盟の代替物ではなく、信頼関係の構築を通じ、その抑止機能を補完すること、またそれは大国間の競争関係をより協調的に変えるものであると捉える。また、ASEANにとりこうした協調的安保の枠組みは、日中米三国を東南アジアを含む地域の安保問題に関与させる有用な手段である。筆者は、日米、米韓同盟は、こうした多国間安保の枠組みを有効に機能させる上で寄与していると評価する。 このような「ARF WAY」ともいうべきやり方は、半島情勢改善の上でも有用である。現在の朝鮮半島に関する四者会合や日米中三国対話は、ARFの北東アジアの安定に対する有用性を高めこそすれ損なうものではない。しかし、筆者も指摘するように、ASEAN諸国のそれに対する関心の低さを反映して、ARFのこの地域の問題に対する取り組みは不十分である。そのため筆者は、今後ARFと日米、米韓同盟との関係強化に加え、北朝鮮に続いて台湾の加盟問題もARFで議論すべきであると主張する。 最後に、筆者はARFが着実に発展するかどうかがASEANにとっての課題であり、そのためには次の点が重要であると指摘する。(一)ASEANによる紛争の解決の努力。(二)予防外交に対する多国間のアプローチの重要性及びそのための日米同盟など二国間アプローチの活用。(三)協調的安全保障の枠組みによる同盟の目的と役割の明確化及びARF自体の価値の認識。(四)ARFの全体会合の議長職の増加。(五)常設事務局の創設。(六)地域の安全保障の上での多国間の枠組みの重要性の認識。及び(七)東南アジアの安全保障の上での日米、米韓同盟の重要性の認識。 さらに筆者は、国際社会のルールに従って行動し始めている中国や北朝鮮がARFに積極的に参加することが、その多国間安全保障の枠組みとしての価値と信頼性をさらに高めるであろうと述べる。 このように、本論文は同盟及び協調的安全保障に対するASEANの視点を提示するものであるが、不確実性を特色とするアジア太平洋における安全保障の在り方を考察する上で、アカデミズムのみならず、政策立案・決定者に対しても貴重な視点を提供するものであるといえる。 |
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