松井一彦の論文4
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安全保障協力
 ー北東アジアの繁栄と安定のための努力
Ok-Nim Chung, C.H.Kwan, Alexandre Mansouriv, Kiyoshi Sugawa, Wu Xinbo, I Yuan, Security Mutualism: Investing Stakes in a Prosperous and Stable Northeast Asia(CNAPS Working Paper Series Volume 2, Number 1, Center for Northeast Asia Policy Studies, Foreign Policy Studies, Brookings Institution, 2000.)

 経済的相互依存関係の深化は国際関係の安定化を促すのか。この命題は国際政治学においても興味のあるものであるが、著しい経済発展を背景に経済的相互依存関係が深化しつつある北東アジアでは、依然として国際関係が不安定なままである。何故北東アジアでは安定化が進まないのか。この地域が安定化し、平和と繁栄を享受するため何を為すべきなのか。二一世紀における日本にとっての最大の課題がこれら難問に対する回答を見いだすことであることは疑いがない。
 本稿で紹介する米ブルッキングズ研究所・北東アジア政策研究センターの共同論文は、北東アジアの現状を踏まえつつ安定化のための課題について分析し、政策提言を行ったものである。
 論文は、経済と安全保障との間のある種の緊張関係を浮き彫りにするため、主要な分析枠組みを検討することから論じ始めている。まず各国間の経済的相互依存関係が緊密になっているにも拘わらず何故不安定なのかという問いに対する答えをネオリアリズム、リベラル・インスティテューショナリズム及びコンストラクティヴィズムの理論に基づきそれぞれ導き出しているが、いずれも部分的にしか説明できず、北東アジアの状況が既存の国際政治理論では説明のつかないことを指摘する。
 次に、各国間にある協力関係の度合いを経済と安全保障に分けて分析している。その結果、経済分野については貿易・投資の拡大や政府・非政府レベル双方での協力が進んでいるのに対し、安全保障分野では各国の国益の違いもあり協力の度合いは低く、それどころか軍備競争など種々の不安定要因を生んでいるとする。
 以上から論文では、経済的相互依存関係と繁栄が持続するためには、安全保障分野をも含めた包括的かつ長期的アプローチの重要性を指摘する。また地域安全保障問題に適切に対処するため、現時点で全域的安全保障レジームの創設を期待するのは時期尚早であり、むしろ共通の安全保障や安全保障協力をより活用すべきであると主張する。この安全保障協力とは、関係各国の共通の利益を基礎に置く安全保障メカニズムであり、経済・政治分野における地域統合の促進を意図するものである。
 以上を踏まえ、論文は地域全体、地域、二国間及び一国という四つのレベルにおいて関係各国が取り組むべき点を提示する。第一に地域全体の安全保障の枠組みに関しては、各国が一国の安全保障より共通の安全保障や安全保障協力を重視すすことの重要性を説く。また、「投資家」、「賭金を預かる第三者」、「保険契約者」の概念を用いることにより、共通の利益が何であるかを明確にする必要があると述べる。特に朝鮮半島及び台湾海峡問題の解決を考える上で重要なことは、関係国間の経済社会発展レベルの均一化であり、そのため相互の利益に資する累次の措置を検討すべきであるとする。
 第二に地域レベルでの取り組みに関し、対話の枠組みを全域、亜地域及びトラック2に分け、それぞれのレベルで構築する必要があること、またAPEC、WTO等の国際的枠組みを通じて各国間の経済的相互依存関係を安定化することが重要であるとする。またASEANプラス3及びアジア通貨基金(AMF)を通じて地域経済統合を促進すること、及び北東アジア諸国の議会間交流促進のため議会間機構を創設することの必要性も説く。さらにトラック2では、弾道ミサイル防衛、軍備管理、北東アジアにおける米兵力、同盟の効用と限界等の問題を取り上げるべきとする。
 このほか、地域経済・安全保障問題に関する協議のために関係国間のミニラテラル対話、特に日米中間の三国対話を促進すこと、これらの国々の首脳が定期的に一同に会して、様々な問題を協議すること、さらにKEDOや四カ国協議など、特定の問題協議のための多国間協議の枠組みを支援することにも言及する。
 第三に二国間レベルに関し、問題解決に向けた協議を活発化すること、特に中台間の貿易、投資、輸送、郵便などを通じ政治・経済交流を活発化して、紛争を避けるために最大限の努力を行うこと、また同盟については、その意義を認めつつ、この地域でより広範な協議と共通の安全保障及び安全保障協力を進めるために改善を図る必要があるとする。
保障問題に適切に対処するため、現時点で全域的安全保障レジームの創設を期待するのは時期尚早であり、むしろ共通の安全保障や安全保障協力をより活用すべきであると主張する。この安全保障協力とは、関係各国の共通の利益を基礎に置く安全保障メカニズムであり、経済・政治分野における地域統合の促進を意図するものである。
 以上を踏まえ、論文は地域全体、地域、二国間及び一国という四つのレベルにおいて関係各国が取り組むべき点を提示する。第一に地域全体の安全保障の枠組みに関しては、各国が一国の安全保障より共通の安全保障や安全保障協力を重視すすことの重要性を説く。また、「投資家」、「賭金を預かる第三者」、「保険契約者」の概念を用いることにより、共通の利益が何であるかを明確にする必要があると述べる。特に朝鮮半島及び台湾海峡問題の解決を考える上で重要なことは、関係国間の経済社会発展レベルの均一化であり、そのため相互の利益に資する累次の措置を検討すべきであるとする。
 第二に地域レベルでの取り組みに関し、対話の枠組みを全域、亜地域及びトラック2に分け、それぞれのレベルで構築する必要があること、またAPEC、WTO等の国際的枠組みを通じて各国間の経済的相互依存関係を安定化することが重要であるとする。またASEANプラス3及びアジア通貨基金(AMF)を通じて地域経済統合を促進すること、及び北東アジア諸国の議会間交流促進のため議会間機構を創設することの必要性も説く。さらにトラック2では、弾道ミサイル防衛、軍備管理、北東アジアにおける米兵力、同盟の効用と限界等の問題を取り上げるべきとする。
 このほか、地域経済・安全保障問題に関する協議のために関係国間のミニラテラル対話、特に日米中間の三国対話を促進すこと、これらの国々の首脳が定期的に一同に会して、様々な問題を協議すること、さらにKEDOや四カ国協議など、特定の問題協議のための多国間協議の枠組みを支援することにも言及する。
 第三に二国間レベルに関し、問題解決に向けた協議を活発化すること、特に中台間の貿易、投資、輸送、郵便などを通じ政治・経済交流を活発化して、紛争を避けるために最大限の努力を行うこと、また同盟については、その意義を認めつつ、この地域でより広範な協議と共通の安全保障及び安全保障協力を進めるために改善を図る必要があるとする。
 最後に一国レベルでは、二国間及び多国間レベルで地域関与・協議の問題に取り組むため、より一層財政と人的資源を投入する必要性を強調する。
 北東アジアには未だに先の大戦及び冷戦対立の残滓が存在する。また、各国の歴史認識及び安全保障観や外交観も多様である。そのため、各国間で信頼関係は生まれておらず、各国とも地域全体の利益よりむしろ国益増進型の政策を追求する傾向が比較的強い。こうしたいわば古典的な外交・安全保障政策が採られているという北東アジアの特徴にかんがみれば、論文も指摘するように、地域の安定化のためには、各国の政策担当者の意識を変え、彼らの目が一国の国益だけでなく各国共通の利益にも向くようにしていく必要があることは疑いがない。
 本論文で示された数々の提言は、各国がもしそれらの重要性を認識し、現実の政策として実施することができれば、現在この地域に存在する数々の不安定要因を除去し、地域の安定と繁栄に資することは間違いないであろう。そういう意味で、本論文は日本の対外政策を考える上でも貴重な視点を提供するものであるといえよう。                    













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